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犬や猫が水をよく飲む?おしっこをたくさんする?|タンパク漏出性腎症が引き起こす血栓と突然死

「うちの子は元気だから大丈夫」と思っていても、体の中では気づかないうちに病気が進行していることがあります。

特に見た目の変化が少ないまま進行し、突然命に関わる状態を引き起こすことがある病気のひとつが「タンパク漏出性腎症(PLN:Protein-Losing Nephropathy)」です。

今回は、犬や猫の突然死の原因にもなりうるタンパク漏出性腎症について、症状・原因・検査・治療の流れを解説します。

■目次
1.タンパク漏出性腎症とは?
2.命を奪う血栓症|突然死のメカニズム
3.見逃したくない初期症状|“多飲多尿”はサインの一つ
4.診断と治療の流れ|早期発見で命を守るために
5.まとめ|“なんとなくの変化”が命を救うサインに

タンパク漏出性腎症とは?


タンパク漏出性腎症とは、腎臓の働きが弱まり、本来は体にとどめておくべきタンパク質が尿の中に漏れ出してしまう病気です。

腎臓は、体に不要な老廃物を排出しつつ、必要な成分はしっかり保持するフィルターのような役割を担っています。しかし、そのフィルターが傷むと、大切なタンパク質まで失われてしまいます。

この病気の厄介な点は、初めのうちは目立った変化がほとんどないことです。見た目はいつもどおりでも、体の中ではじわじわと負担が積み重なり、気づいたときには進行していることも珍しくありません。

背景には、慢性腎臓病の一部として起こるケースのほか、感染症・免疫疾患・腫瘍など、さまざまな病気が関わることがあります。

命を奪う血栓症|突然死のメカニズム


タンパク質が尿中へ失われると「低アルブミン血症」が起こり、血液のバランスが崩れます。この状態では、血液が固まりやすくなる「過凝固状態」になり、血栓(血のかたまり)ができやすくなることが問題です。

血栓が血管に詰まると、詰まった場所によってさまざまな症状が引き起こされます。

<足の血管に詰まった場合>
まず足の血流が悪くなり、激しい痛み麻痺を引き起こします。
さらに血流が途絶えると、壊死(組織が死んでしまう状態)に進行することがあります。

<肺・心臓に詰まった場合>
もっとも危険なのがこのケースです。
血栓が肺や心臓に達すると、急激な呼吸困難失神肺塞栓による突然死につながることがあります。

脳・腎臓の血管に詰まった場合>
ふらつき発作意識の変化腎機能悪化など、詰まった場所に応じた臓器障害として現れます。

いずれの場合も、一度血栓ができてしまうと治療が難しくなるため、血栓ができる前に異変に気づくことが何よりも大切です。

見逃したくない初期症状|“多飲多尿”はサインの一つ


タンパク漏出性腎症は、はっきりとした症状が出る前から静かに進行することが多い病気です。そのため、見た目の元気さだけでは判断できず、日常のちょっとした変化が大切なサインになります。

気づきやすい初期症状の例としては、次のようなものがあります。

元気がない
食欲が落ちてきた
体重が減ってきた
毛艶が悪くなった
水を飲む量・尿の量が増えた(多飲多尿)

なかでも注意したいのが「多飲多尿」です。水を飲む量や尿の量が増えるのは腎臓病の代表的なサインで、放っておくとタンパク漏出性腎症の進行や血栓症のリスクにつながることがあります。

<症状が出ないまま進行することも>
ただし、こうした症状が まったく出ないまま進行するケースも珍しくありません。
そのため、症状の有無にかかわらず、定期的に尿検査や血液検査を受けておくことが早期発見の大きな助けになります。

特に中〜高齢の犬や猫、慢性腎臓病を抱えている子はリスクが高いため、日頃からよく観察し、少しでも「いつもと違う」と感じたら早めにご相談いただくと安心です。

診断と治療の流れ|早期発見で命を守るために


タンパク漏出性腎症が疑われる場合、まず大切なのは 「今、体の中で何が起きているのか」 を丁寧に見極めることです。

<どのように診断していくの?>
見た目だけでは判断できず、原因も一つとは限りません。そのため、段階を踏んで必要な検査を組み合わせながら、総合的に判断していきます。

問診・身体検査
まずは、飼い主様からのお話が診断の軸になります。いつから・どのような変化があるのかを伺い、身体検査で全身状態を確認していきます。

各種検査
問診・身体検査から分かったことをもとに、次のような検査を組み合わせて腎臓の状態や背景にある病気を探っていきます。

尿検査:尿タンパクの有無や程度を確認します
血液検査:アルブミン値、腎機能、炎症の有無などをチェックします
画像検査(主にエコー):腎臓の形や血流の異常、背景疾患の有無を確認します

<治療は“原因そのもの”に向き合うことが大切>
診断で原因の方向性がつかめたら、治療に入ります。タンパク漏出性腎症は、タンパク尿を止めることだけではなく、その背景にある病気を治療することが重要です。

血圧やタンパク漏出のコントロール(ACE阻害薬など)
腎臓の働きを守り、進行を抑えるための薬を使います。

感染症・免疫疾患・腫瘍などの治療
背景疾患に合わせた治療を行い、腎臓の負担を減らします。

食事療法
腎臓にやさしい食事(低タンパク・低リン食)や、サプリメントを組み合わせてサポートします。

治療は一度で終わるものではなく、継続的なフォローがとても大切です。定期的な検査で数値の変化を追うことで、進行の早期発見や再発防止にもつながります。

かすみペットクリニックでは「検査が何のためなのか」「治療でどんな変化を目指すのか」などを、一つひとつ丁寧にご説明し、飼い主様と一緒に最適な治療の道筋を考えていきます。

まとめ|“なんとなくの変化”が命を救うサインに


タンパク漏出性腎症は、見た目だけでは気づきにくく、進行すると血栓症をきっかけに突然命を奪ってしまうこともある怖い病気です。一方で「最近よく水を飲む気がする」など、ちょっとした変化に早めに気づき、検査につなげることで、重い状態になる前に対策できる可能性もあります。

また、定期的な尿検査・血液検査を受けておくことで、“見えないところで進む変化”をいち早くキャッチしやすくなります。はっきりとした症状が出るのを待つのではなく「少し心配だな」と感じたタイミングで相談していただくことが、愛犬・愛猫の命を守る大切な一歩です。

多飲多尿や元気・食欲の変化など、少しでも気になることがあれば、どうぞお早めにご相談ください。

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