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犬や猫が呼吸困難?|呼吸が速い・苦しそうなときの原因と病院に行くべき判断基準を解説

愛犬や愛猫の呼吸が速いと、「もしかして呼吸困難を起こしているのでは?」と心配になることもあるかと思います。実際、呼吸が速くなる原因は、暑さや興奮などの一時的なものから、健康に関わる深刻な病気までさまざまです。

例えば、気道が塞がれて呼吸がしづらくなったり、肺が十分に膨らまなくなったりすると、犬や猫の体にも大きな負担がかかります。そのため、呼吸の異常に気付いたら早めの対処がとても大切です。

今回は、犬や猫の呼吸が速くなる原因や、呼吸困難に対する治療法について詳しく解説します。

■目次
1.呼吸が速いときに考えられる原因とは?
2.ウイルス感染やフィラリア症も呼吸困難の原因に
3.病院に行くべき判断基準は?
4.呼吸が速い、呼吸困難で考えられる疾患
5.診断方法
6.治療方法
7.予防方法やご家庭での注意点
8.まとめ

呼吸が速いときに考えられる原因とは?


健康な状態でも、暑さや興奮、恐怖を感じたときに、犬や猫の呼吸が速くなることはよくあります。特に、運動後や気温が高い日などは、呼吸が少し荒くなるのは自然な反応です。

しかし、呼吸が苦しい場合や体のどこかに痛みがある場合も、呼吸が速くなることがあります。
このため、呼吸の変化が一時的なものなのか、それとも何らかの異常のサインなのかを見極めることが大切です。

ウイルス感染やフィラリア症も呼吸困難の原因に


犬や猫の呼吸困難の原因として、ウイルス感染やフィラリア症はよく知られています。
ウイルス感染の中には、気管支炎や肺炎など呼吸器に影響を及ぼすものが多く、咳や息切れを引き起こすことがあります。

フィラリア症は蚊を介して体内に寄生虫が入り込み、心臓や肺に大きな負担をかける病気です。フィラリア症にかかると息が荒くなったり、咳が出たりすることが多く、進行すると命に関わる危険性もあります。

こうした感染症は、混合ワクチンや予防薬の投与によって予防ができます。かかりつけ医とよく相談しながら、予防プログラムを組むようにしましょう。

病院に行くべき判断基準は?


安静時の正常な呼吸数は、犬で20〜30回/分、猫で15〜25回/分が目安です。そのため、安静にしているときに、これらの数字を大きく超える場合は「異常」の可能性が考えられます。
ただし、呼吸数には個体差があるため、必ずしも数値だけで判断する必要はありません。

また、犬や猫は通常、鼻呼吸で胸とお腹が同時に自然に動いています。しかし、次のような場合は呼吸が苦しいサインと言えるでしょう。

お腹に力を入れて呼吸している
肩で呼吸しているように見える
猫の場合は口呼吸をしている(犬は運動後や興奮時に口呼吸をすることがありますが、猫の場合は異常のサインです)

このように、呼吸数や呼吸の様子が普段と違う場合はできるだけ早く病院で診てもらうことが大切です。

呼吸が速い、呼吸困難で考えられる疾患


呼吸が速くなる場合や息苦しそうな様子が見られる場合、呼吸器や循環器の病気が関係していることがあります。
また、症状が急に現れたのか、あるいは徐々に進行しているのかによっても、原因や対処方法が異なることが考えられます。

<呼吸器の疾患>
・上部気道の病気(気道の入り口や気管)
頸部気管虚脱、短頭種気道症候群、異物誤飲、喉頭炎などの喉頭疾患、鼻炎などの鼻腔疾患などが原因となることがあります。
上部気道の場合は、吸気時努力呼吸(吸うときに時間がかかる様子)が見られます。

・下部気道の病気(気管支や肺に近い部分)
代表的なものとして胸腔内気管虚脱喘息があります。喘息の場合、発作的に呼吸が荒くなり、ヒューヒューとした音が聞こえることがあります。

・肺の病気
肺水腫や肺炎、肺挫傷が考えられます。

<循環器の疾患>
・心臓に関連する病気
心臓の働きが低下すると、息切れや呼吸が速くなることがあります。
例えば急な心不全や肺血栓塞栓症では、突然の呼吸困難が起こります。慢性的な心臓病の場合は、特に夜間や安静時に咳がひどくなる傾向があります。

<胸の疾患>
気胸、胸水、血胸、横隔膜ヘルニアなどが原因となりやすく、急性の呼吸困難を引き起こしやすい病気です。

<痛みによる呼吸の速さ>
胃腸炎、骨折、関節炎などの痛みが原因で呼吸が速くなることがあります。
この場合、呼吸器自体に問題があるわけではなく、痛みによって呼吸が浅く速くなる反応が引き起こされます。

<その他>
熱中症や貧血でも呼吸が速くなることがあります。特に熱中症では、パンティング(浅く速い呼吸)が見られることが多く、急に症状が現れるのが特徴です。

診断方法


まず、問診や視診、触診、聴診などを通して、犬や猫の体の様子を細かく確認します。
このとき、体温、心拍数、呼吸数、呼吸の状態、サチュレーション(SPO2)といったバイタルサインもチェックします。特にサチュレーションの数値は重要で、低い場合には呼吸器の病気が疑われます。

その後、必要に応じてレントゲン検査やエコー検査、血液検査などを行い、さらに詳しく状態を確認することで総合的な診断を行います。

治療方法


呼吸困難が起きている場合、まずは呼吸を安定させることが最優先です。
最初に口の中を確認し、異物があれば取り除きます。
もし重度の気道閉塞がある場合や異物を取り除くのが難しい場合には、気管切開を行って気道を確保します。気道が確保できたら、酸素吸入や気管支拡張薬などの薬を使用して、呼吸が少しでも楽になるように治療します。

呼吸が安定したら、次に原因に対する治療を進めます。
胸に水が溜まっている場合は、胸に針を刺して水を抜く「胸腔穿刺」を行います。
また、気管虚脱が原因であれば、気管支拡張薬や咳止めなどを使用し、重度の場合には気管を広げる手術が必要になることもあります。

予防方法やご家庭での注意点


犬や猫が呼吸器や循環器の健康を保つためには、日々の観察と定期的なケアがとても重要です。
特に呼吸器や循環器の病気は、早期発見・早期対処が健康を守るカギになります。年に数回の健康診断を受けることで、病気の兆候を見逃さず、初期の段階で治療を始めることができます。

また、犬や猫がえづいている様子は嘔吐と勘違いしやすいことがありますが、実はこれが咳であることが多く、呼吸器に何らかの異常があるサインかもしれません。こうした兆候を見逃さないためにも、日頃から愛犬や愛猫の様子を観察するよう心がけましょう。

さらに、冬の寒い時期には防水スプレーの使用にも気を付けましょう
室内で防水スプレーを使うと、ストーブなどの熱でスプレーの成分が拡散し、それを犬や猫が吸い込んでしまうと肺に負担をかけ、重篤な呼吸困難を引き起こす可能性があります。特に寒い季節は防水スプレーを使用する機会も増えがちですが、必ず屋外で使用するようにしましょう。

まとめ


犬や猫の呼吸が速くなっているとき、その原因が暑さや興奮、恐怖といった一時的なものであれば、環境を整えることで通常の呼吸に戻ることがほとんどです。
しかし、異常な様子が続く場合は、病気が原因で呼吸が速くなっている可能性が考えられるため、早めに獣医師に相談することが大切です。

特に、呼吸困難は命に関わることもあるため、できるだけ早急に病院での検査を受け、適切な診断と対応をしてもらいましょう
今回ご紹介した内容を参考に、気になる症状が見られた場合はまずは当院までご一報ください。

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