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なんだか歩き方がおかしい…犬や猫の“足のトラブル”を見逃さないために

階段の前で立ち止まったり、ジャンプをためらったり…「なんだか動きがぎこちないな」と感じたことはありませんか?

犬や猫は、足に違和感があっても言葉で訴えることができません。そのため、歩き方やしぐさのちょっとした変化に気づくことが、ケガや病気の早期発見につながります。

今回は、犬や猫の足の異常のサインや考えられる原因、診断の流れ、そして当院での対応についてご紹介します。

■目次
1.足の異常に関係する主な原因
2.飼い主様が気づきやすいサインと受診の目安
3.正確な診断のために|検査と判断の流れ
4.早めの対応が回復のカギに
5.まとめ

足の異常に関係する主な原因


犬や猫の足のトラブルには、さまざまな原因が絡んでいます。
見た目には分かりにくい場合も多く、触っても痛がらないのに歩き方だけおかしい…といったケースも珍しくありません。以下に、代表的な原因をまとめました。

<関節の異常>
足の動きに大きく関わる関節は、炎症や変形があると歩き方に異常が出やすくなります。

・関節炎
加齢や使いすぎなどが原因で関節に炎症が起こり、動くときに痛みを感じます。(特にシニア期に多い)

・膝蓋骨脱臼
膝のお皿(膝蓋骨)がずれてしまう状態で、小型犬に多く、スキップするような歩き方が見られます。

・股関節形成不全
股関節のかみ合わせが生まれつきゆるく、歩行時に痛みや違和感が出ます。(大型犬に多い)

・変形性関節症
関節の変形によって動かしにくくなったり、痛みが慢性化したりする進行性の病気です。

<骨の異常>
骨そのものにトラブルがあると、痛みや歩行困難などが強く出る傾向があります。

・骨折やヒビ
転倒や事故などの外傷で骨に損傷が起こり、強い痛みや歩行困難が見られます。

・骨腫瘍
骨にできる腫瘍で、進行すると骨の変形や激しい痛みを引き起こすことがあります。

・骨の発育異常
成長期に骨の成長がアンバランスになることで、歩き方に異常が出ることがあります。

<神経の異常>
神経に障害があると、痛みだけでなく足の動きそのものに支障が出ることがあります。

・椎間板ヘルニア
背骨の間にあるクッションが飛び出し、神経を圧迫して足に麻痺や痛みを起こす病気です。

・末梢神経障害
足先に向かう神経に異常があると、筋力低下やふらつき、動きの鈍さが出ることがあります。

・脳の病気による運動機能の異常
脳に病変があると、体のバランスが崩れたり、足の動きに異常が出たりします。

<血流の異常>
足に血液が届かなくなると、突然の動きの異常や冷たさ、激しい痛みが出ることがあります。

・動脈血栓塞栓症
特に猫に多く、血管に血のかたまり(血栓)が詰まって突然足が動かなくなったり、足先が冷たくなることがあります。

・血栓や静脈の循環障害
血液の流れが悪くなることで足の腫れや痛み、動きづらさが見られることがあります。

<その他の原因>
皮膚や爪のトラブル、体の使い方のクセなども足の不調につながることがあります。

・足裏の外傷
棘(とげ)やガラス片などが刺さって傷つくと、痛みで歩き方が変わります。

・爪の損傷や化膿
爪が折れたり根元が炎症を起こしたりすると、足をかばうようになります。

・皮膚病による肉球の炎症
アレルギーや感染症によって肉球が赤くなり、痛みや違和感が出ます。

・肥満や姿勢の癖による負担の偏り
体重のかかり方が偏ることで、特定の足に過度な負担がかかり痛みの原因となります。

このように、足の異常といっても原因は多岐にわたります。単なる「ケガ」と思われがちな症状でも、体の中の深い部分に問題が隠れていることもあります。

飼い主様が気づきやすいサインと受診の目安


日常の中で、次のような様子が見られたら注意が必要です。

歩き方がいつもと違う、ぎこちない
足を引きずる、ケンケンする
足を触ると嫌がる
片足を浮かせている、体重をかけたがらない
階段を避ける、ジャンプをためらう
朝だけ足をかばい、しばらくすると普通に戻る(慢性的な痛みの特徴)

さらに、以下のような症状がある場合は緊急性が高いため、できるだけ早くご受診ください。

急に後ろ足が動かなくなった
足先が冷たくなっている
呼吸が荒く、ぐったりしている
強い痛みで鳴く、暴れる
排尿や排便ができない

特に猫では「足を引きずる」「足が冷たい」といった症状があるとき、動脈血栓塞栓症のおそれもあるため、早めの対応が必要です。

正確な診断のために|検査と判断の流れ


足の異常は、見た目や触診だけで原因を特定するのが難しいケースも多くあります。そのため、当院では以下のような検査を組み合わせて、総合的に診断を行っています。

<問診と視診・触診>
・飼い主様から、日常の様子や気になる変化を丁寧におうかがいします。
・歩き方を観察したり、関節の動きや痛みの有無を確認します。

<各種画像検査>
レントゲン検査:骨折や関節の異常など、骨の状態をチェックします
エコー検査:筋肉や靭帯などの状態を調べます
CT・MRI検査:神経や血管に関係する異常が疑われる場合、必要に応じて高度医療施設にご紹介して実施します

<血液検査>
・炎症の有無や、腫瘍のサイン、血栓のリスクなどを調べます。

<神経学的検査>
・姿勢の反応や足の動きなどを確認し、神経の働きを評価します。

症状の原因によっては、整形外科や神経の専門病院と連携して治療を進める場合もあります。飼い主様とご相談しながら、無理のない方法で一緒に進めていきますので、ご安心ください。

早めの対応が回復のカギに


「そのうち良くなるかも…」と様子を見ているうちに、症状が進行してしまうことは少なくありません。特に関節や神経の異常は、放っておくと慢性化しやすく、治療が長引いたり別の場所に影響が出たりすることもあります。

例えば、放置によるリスクには以下のようなものがあります。

関節の変形や癒着
筋力の低下やバランスの崩れ
痛みの慢性化
他の足や腰への負担による二次的な障害

一方で、早めに対応できれば、安静・お薬・理学療法などの保存的な治療だけで改善するケースも多く、愛犬・愛猫への負担を軽くすることができます。

また、当院では必要に応じて、整形外科や神経科の専門病院へのご紹介もスムーズに行える体制を整えています。「もしかして足に違和感があるかも?」と感じたら、どうぞお気軽にご相談ください。

まとめ


犬や猫の足のトラブルは「どこかにぶつけただけかも」「年齢のせいかな」と軽く考えてしまいがちです。ですが、そうした何気ないしぐさの裏に、大きな病気が隠れていることもあります。

かすみペットクリニックでは、飼い主様のちょっとした気づきを大切にしながら、歩き方や動きの変化にも丁寧に向き合い、必要に応じた検査・診察を行っています。「なんだか歩き方が変かも…」と感じたときこそ、受診のタイミングです。そのサインを見逃さず、どうぞお気軽にご相談ください。

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