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犬の甲状腺機能低下症|“なんとなく元気がない”を見逃さないために

犬がシニア期に入ると、活動量が減ったり、休む時間が増えたりといった変化はよくみられます。しかし「なんだか元気がない」「最近ぼんやりしている気がする」など、いつもと違う様子が続くと飼い主様としては心配になりますよね。

実はその背景に、毛のボリューム低下などと合わせてみられる「甲状腺機能低下症」が隠れていることがあります。甲状腺機能低下症はゆっくり進行し、症状が曖昧なため気づかれにくい病気です。

今回は、日常の小さな変化から気づけるポイントや、検査・治療の流れについて詳しくご紹介します。

■目次
1.甲状腺機能低下症とは?|ゆっくり進むからこそ見逃されやすい病気
2.気づきにくい症状
3.診断の重要性|曖昧な症状でも“検査でわかること”がある
4.治療と生活ケア|“その子らしさ”を取り戻すためにできること
5.まとめ

甲状腺機能低下症とは?|ゆっくり進むからこそ見逃されやすい病気


甲状腺機能低下症は、体の働き全体を調整する「甲状腺ホルモン」が不足してしまうことで、代謝がゆっくりになってしまう病気です。甲状腺ホルモンは体温維持、エネルギー代謝、皮膚や毛の健康など幅広い役割を持っています。

そのため、不足すると寒がりになる、疲れやすくなる、毛づやが悪くなる、皮膚が乾燥するなど、全身にさまざまな影響が現れます。一般的にはシニア期に多い病気ですが、若い犬で発症するケースもあります。

また、ゴールデン・レトリーバーシベリアン・ハスキーなど、遺伝的に発症しやすい犬種がいることもわかっています。症状がゆっくり進むため「このくらいなら様子を見てもいいかも」と見過ごされがちですが、体の複数の臓器に負担がかかっているおそれがある点には注意が必要です。

気づきにくい症状


犬の甲状腺機能低下症では、はっきりとした異常ではなく「なんとなく元気がない」「いつもと違う気がする」といった曖昧な変化から始まることが少なくありません。シニア期によく見られる変化と重なりやすいため、飼い主様が気づきにくい点が特徴です。

ここでは、日常で見られやすい具体例を3つのカテゴリに分けてご紹介します。

<行動や元気の変化>
活動量が落ちたり、反応がゆっくりになったりと、“年齢のせい”と思われやすい変化がみられます。

散歩を以前より嫌がる
呼んでも反応が遅い
眠っている時間が増える

一つひとつは小さな変化でも、甲状腺ホルモン不足が背景にあることがあります。

<皮膚や毛の変化>
甲状腺機能低下症では、皮膚や被毛のトラブルが比較的はっきり表れやすい傾向があります。

毛が薄くなる、左右対称に抜ける
毛づやが悪くなる
フケが増える
皮膚が乾燥して硬くなる

「最近なんだか毛並みが気になる…」という違和感は、大切なヒントになることがあります。

<その他の“なんとなく”の変化>
生活の中で感じる微妙な違いも、実は見逃せないサインです。

食事量は変わらないのに、体重が少しずつ増える
顔つきが悲しそうに見える
寒さが極端に苦手になる

これらは加齢でも起こりうるため「年だから仕方ないかな」と思われやすいのですが、甲状腺機能低下症でもよくみられる変化です。

ここで挙げた症状は、どれも日常の中で見逃されやすいものばかりです。しかし、その裏側で甲状腺ホルモンが不足し、代謝がゆっくりになっていることがあります。「少し気になる」「前と違う気がする」という小さな違和感こそ、早めの相談につながる大切なサインです。

診断の重要性|曖昧な症状でも“検査でわかること”がある


甲状腺機能低下症は、ゆっくり進行するうえに加齢による変化ともよく似ているため、症状だけで判断することが難しい病気です。ここでは、どのように診断を進めていくのかをご紹介します。

<症状だけでは判断できない理由>
甲状腺ホルモンが不足すると、元気のなさ・寒がり・皮膚や毛の変化など、加齢やほかの病気でも見られるサインが重なって現れます。そのため「この症状がある=甲状腺機能低下症」と絞り込むことはできません。

<血液検査でわかること>
診断の中心となるのは血液検査です。以下の項目を確認することで、体のどこで変化が起きているのかを探っていきます。

甲状腺ホルモン濃度(T4など):ホルモンの不足がないかを見る指標
関連ホルモン(TSH): 甲状腺の働きが低下していないかを示す指標
コレステロール値:代謝低下のサインとして上昇しやすい値

ただし、これらの数値はその日の体調などでも変動するため、一度の検査では「正常値=問題なし」と断定できない点にも注意が必要です。

<他の病気との見分けと“総合的な診断”の重要性>
甲状腺機能低下症と似た症状を示す病気は多く、腫瘍・内分泌疾患・慢性疾患などが背景にあることもあります。また、実際の診療では「検査してもすぐに明確な答えが出ない」ケースも少なくありません。

そのため、

症状
血液検査の結果
日常の様子
他の病気の可能性

といった複数の要素を、丁寧に組み合わせて評価する総合的な診断がとても重要になります。

曖昧な症状でも、早めにご相談いただくことで治療の選択肢が広がり、生活の工夫によって症状を軽減できることもあります。不安に構えすぎる必要はありませんが「少し気になる変化がある」そのタイミングでご相談いただくことが、安心への第一歩になります。

治療と生活ケア|“その子らしさ”を取り戻すためにできること


甲状腺機能低下症は、治療によって改善が期待できる病気です。適切なケアを続けることで、少しずついつもの表情や動きが戻ってくる子も多くいます。

<治療の中心は“足りないホルモンを補うこと”>
甲状腺ホルモンが不足しているため、基本の治療はホルモンを補う薬を継続して飲むことです。

お薬の効果が現れてくると、次のような嬉しい変化がみられます。

散歩を楽しむようになる
表情が明るくなる
動きが軽くなる
毛並みが整ってくる

ただし、改善のスピードには個体差があります。数週間で変化が出る子もいれば、ゆっくり時間をかけて良くなっていく子もいますので、焦らず見守ることが大切です。

<継続的な血液検査が必要な理由>
ホルモン剤は、多すぎても少なすぎても体に負担がかかります。そのため、治療中は定期的に血液検査を行い、その子に合った量へ細かく調整していきます。

効果が弱い量を増やす
効果が強すぎる量を減らす

この調整によって、無理のない範囲で体の調子を整えていくことができます。

<生活面で気をつけたいこと>
治療と並行して、日常生活の中でサポートしてあげられるポイントもあります。

急な運動量の増加は避ける
ホルモンバランスが整うまで疲れやすく、無理をすると体調を崩しやすいため、負担の少ないペースを心がけてあげましょう。

体重管理を丁寧に
代謝が落ちることで太りやすい傾向があります。肥満を防ぐことで関節や心臓への負担軽減にもつながります。

季節に合わせた温度管理を
体温調節が苦手になり、特に寒さに弱くなる子が多いため、冬は暖かく過ごせる環境づくりが大切です。

こうした小さな工夫は、治療効果をより引き出す助けになります。

まとめ


甲状腺機能低下症は気づきにくい病気ですが、治療によって改善が期待できる疾患です。「年齢のせい」と決めつけず、元気の低下や毛の変化が気になるときは、早めに相談していただくことで安心につながります。

かすみペットクリニックでは、症状・生活環境・検査結果を総合的に確認し、その子にとって負担の少ない治療をご提案しています。「なんとなくおかしいな…」と感じた時点で、ぜひ一度おご相談ください。

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