愛犬や愛猫の健康を守るためには、日々の観察が大切です。例えば、普段通り元気な姿を見せていても、ふとした瞬間に「なんだか皮膚が黄色いかも?」と違和感を感じることがあるかもしれません。そのような皮膚が黄色くみえる状態は「黄疸(おうだん)」と呼ばれる症状の場合があり、内臓や血液の働きに何らかの異常が生じていることがあります。
黄疸は単なる色の変化ではなく、健康状態の重要なサインとして見逃せないものです。そのため、早めに気づき、適切な対応を取ることが、愛犬や愛猫の健康を守るために重要です。
今回は、黄疸の原因や早期発見のポイントについてご説明します。
■目次
1.黄疸とは?
2.黄疸が起こる主な原因
3.診断方法
4.治療方法
5.日常生活でのケア
6.まとめ
黄疸とは?
黄疸(おうだん)とは、体内でビリルビンという物質が異常に増えた結果、皮膚や粘膜、強膜と呼ばれる白目の部分が黄色くなる状態を指します。
ビリルビンは赤血球が壊れる際に発生する物質で、通常は肝臓で処理され、胆汁として体外に排出されます。しかし、この排出までの流れに異常が生じるとビリルビンが蓄積し、黄疸が現れます。
<黄疸が現れやすい部位>
・白目(強膜):黄疸が最も分かりやすい場所です。白目が黄色っぽくなるのは典型的なサインです。
・耳の内側の皮膚:毛が少ない部分に黄疸が目立つことがあります。
・歯茎や口の粘膜:ピンク色であるはずの粘膜が黄色く見える場合も要注意です。
<犬と猫での違い>
黄疸の原因や進行には犬と猫で若干の違いがあります。犬では肝臓や胆管の疾患が原因となることが多く、猫では溶血性疾患や胆管閉塞が多い傾向にあります。また、猫は肝臓の異常を早期に察知しにくく、症状が進んでから発見されるケースが多が多くみられます。
<他の症状との関連性>
黄疸は単独で現れることは少なく、以下の症状と一緒に見られることが多いです。
・食欲不振
・嘔吐や下痢
・元気がない、ぐったりする
・お腹が膨らむ(腹水)
これらの症状が見られる場合は、早めに動物病院に相談することをおすすめします。
黄疸が起こる主な原因
黄疸は主に以下の3つの原因によって引き起こされます。
1. 溶血性の原因
溶血とは、赤血球が異常に壊される状態を指します。これによりビリルビンが大量に生成され、肝臓で処理しきれなくなり黄疸が発生します。
<免疫介在性溶血性貧血(IMHA)>
自己免疫疾患の一種で、免疫が赤血球を攻撃してしまう病気です。突然のぐったり感や貧血症状を伴います。
<寄生虫感染(バベシア症など)>
ノミやダニを媒介とする寄生虫が赤血球を破壊します。
<毒物や薬物中毒>
一部の薬剤や毒物が赤血球を壊すことがあります。
2. 肝臓が原因の場合
肝臓はビリルビンを処理する重要な臓器です。肝臓の機能が低下すると、血液中のビリルビン濃度が上昇し、黄疸が現れます。
<肝炎>
感染症や毒物、薬剤が原因で肝臓に炎症が生じる状態です。
<肝硬変>
肝臓への長期間のダメージが蓄積することで発生します。
<脂肪肝(猫)>
猫の場合、急激な体重減少が原因で肝臓が機能不全に陥ることがあります。
そのほかに腫瘍でも起こることがあります。
3. 胆管閉塞による原因
胆管は、ビリルビンを胆汁として腸に排出する経路です。この経路が詰まると、ビリルビンが血液中に逆流し、黄疸が発生します。
<胆石>
胆管内に石が詰まり閉塞を引き起こします。
<腫瘍>
胆管やその周囲の腫瘍が胆汁の流れを妨げる原因となります。
<胆管炎>
細菌感染が胆管に炎症を引き起こし、閉塞を招くことがあります。
診断方法
犬や猫に黄疸の症状が見られる場合、獣医師は問診や身体検査を通じて原因を特定します。問診では、黄疸が現れた時期や他の症状の有無、最近の投薬歴や生活環境について詳しく伺います。身体検査では、白目や口の粘膜、皮膚の状態を観察し、肝臓の腫れや腹水の有無を確認します。
さらに、血液検査や超音波検査で肝臓や胆管の状態を詳しく調べ、場合によってはレントゲン検査も行います。必要に応じて特殊検査が追加されることもあります。たとえば、寄生虫感染が疑われる場合には血液を顕微鏡で観察したり、肝臓の状態をさらに詳しく調べるために組織の一部を採取する「肝生検」を行うこともあります。これらの検査を組み合わせることで、黄疸の原因を突き止め、適切な治療方針を決定します。
治療方法
黄疸の治療は原因に応じた方法が取られます。
・溶血性の原因:免疫抑制薬、抗寄生虫薬、解毒薬を使用し、症状を改善します。
・肝臓の疾患:肝臓保護薬やビタミンを補給し、栄養管理を行います。
・胆管閉塞:外科手術や薬物治療で胆汁の流れを回復させます。
・対症療法:点滴や栄養補給で体力をサポートします。
日常生活でのケア
治療中や回復後のケアは、愛犬・愛猫の健康を支える重要なポイントです。
まず、食事管理では、獣医師と相談の上、肝臓疾患に配慮した療法食や、消化に優しい高栄養価のフードを選びましょう。また、十分な水分補給も欠かせません。常に新鮮な水を用意し、飲水量が少ない場合にはウェットフードを利用するのも一つの方法です。
血液循環を促すために適度な運動を行いましょう。ただし、体調が悪い場合は無理をせず、愛犬・愛猫の状態を見ながら軽い運動にとどめ、十分な休養を与えることが大切です。さらに、ストレスを減らすため、穏やかで落ち着いた環境を整えてあげてください。
また、日々皮膚や白目、歯茎の状態を観察し、黄疸の再発や悪化を防ぐことも重要です。定期的な健康チェックや処方された薬の適切な管理を徹底し、獣医師と相談しながら回復をサポートしましょう。
まとめ
黄疸は、体内の異常を示す重要なサインのため、日常の観察を通じて早めに気づくことが大切です。皮膚や白目の色に変化がないか、歯茎や耳の内側の粘膜がいつもより黄色く見えないかを定期的にチェックしましょう。また、食欲不振や元気の低下といった体調の変化にも注意が必要です。
日頃から細やかな観察を心がけるとともに、気になる症状があれば早めに動物病院にご相談ください。
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