「なんだか最近、元気がない気がする」「舌や歯ぐきが白っぽい」そんなときは、犬や猫が「貧血」を起こしているケースがあります。
貧血とは、血液中のヘモグロビン(酸素を運ぶ役割を担う成分)が不足している状態を指しますが、これは単なる体調不良ではなく、背景に病気が潜んでいるサインかもしれません。
しかもその原因はさまざまで、一つの病気とは限らないことが、犬や猫の貧血の難しさです。
今回は、犬や猫の貧血に関する基本的な知識と、飼い主様ができるチェック方法、そして動物病院での診断・治療の流れについてご紹介します。


■目次
1.貧血の背景にある主な原因疾患
2.貧血のサインと受診の目安
3.検査と診断の流れ
4.まとめ
貧血の背景にある主な原因疾患
貧血は「病名」ではなく、体内の異常を知らせる症状の一つです。そのため、背景には何らかの原因疾患が潜んでおり、それを明らかにすることが診断・治療の第一歩となります。
以下に、犬や猫の貧血を引き起こす主な原因を紹介します。
<出血によるもの>
体の内外での出血により赤血球が失われ、貧血につながるケースです。
・外傷
交通事故や転倒、ほかの動物との接触によるケガなどで出血が起こります。
・消化管出血
胃潰瘍、腫瘍、寄生虫感染などにより、胃や腸から出血が続くことがあります。
<赤血球の破壊によるもの(溶血)>
体内で赤血球が異常に破壊されることで貧血が生じます。
・免疫介在性溶血性貧血(IMHA)
免疫システムが誤って自分の赤血球を攻撃・破壊してしまう自己免疫疾患です。
・中毒による赤血球の破壊
タマネギやニンニク、ネギなどの食品に含まれる成分が赤血球を壊すことがあります。
<赤血球がうまく作られないことによるもの>
赤血球の産生能力が落ちることで、慢性的に貧血が続きます。
・腎不全
腎臓から分泌される造血ホルモン(エリスロポエチン)の減少により、赤血球が十分に作られなくなります。
・骨髄の病気
白血病や骨髄の異形成などにより、赤血球をつくる細胞そのものがうまく働かなくなることがあります。
・慢性疾患に伴う造血機能の低下
長期間続く炎症や病気によって、赤血球の産生が抑えられてしまうことがあります。
<寄生虫や感染症によるもの>
吸血や感染により赤血球が減少したり破壊されたりします。
・ノミやマダニの吸血
大量の吸血によって、特に小型犬や子猫などで貧血を引き起こすことがあります。
・猫のヘモプラズマ感染症
ヘモプラズマという細菌が赤血球に寄生し、その寿命を短くしてしまう感染症です。ノミやダニ、感染猫とのケンカが主な感染経路とされています。
<慢性疾患や腫瘍に伴うもの>
体内の臓器に問題があると、造血や赤血球の寿命に影響を与えることがあります。
・慢性腎臓病
腎機能の低下により造血ホルモンが不足し、貧血を引き起こします。
・消化管腫瘍
胃や腸にできた腫瘍から出血が続くことで、貧血が進行することがあります。
・肝臓・脾臓の腫瘍
腫瘍そのものの影響や、腫瘍による出血で貧血が起きることがあります。
このように貧血の原因は多岐にわたり、見た目では特定できません。だからこそ、愛犬・愛猫の小さな変化に気づいた時点で、しっかりと検査を受けて原因を突き止めることが重要です。
貧血のサインと受診の目安
犬や猫の貧血は、少しずつ進行するケースが多いため、初期には気づきにくいこともあります。
<日常で見られる主なサイン>
次のような変化が見られたら、早めの受診を検討しましょう。
・舌や歯ぐきの色が薄い/白っぽい
・元気がない、活動量が減った
・食欲が落ちてきた
・少し動いただけで息切れする・呼吸が早い
・心臓の鼓動が速い、またはバクバクしている
・抱っこを嫌がる、ふらつくなどの異変
<ご自宅でできる簡単なチェック>
少しの時間でできる簡単なチェックでも、貧血の早期発見につながることがあります。
▼ステップ① 口の中をチェックする
愛犬・愛猫の歯ぐきや舌の色を見てみましょう。
通常は薄いピンク色ですが、貧血が進むと白っぽく見えることがあります。
できるだけ自然光の下で確認すると、色の違いに気づきやすくなります。
▼ステップ② 目の内側をチェックする
まぶたをそっとめくって、目の裏側(結膜)の色も確認してみてください。
こちらも、健康なときはピンク色をしていますが、貧血があると薄く白っぽく見えることがあります。
▼ステップ③ 呼吸や元気の様子を観察する
お散歩中や遊んでいるときに、息が荒くなっていないか、疲れやすくなっていないかをチェックしてみましょう。以前より動きが鈍く感じたり、すぐに横になってしまうようなら注意が必要です。
貧血の進行がゆるやかな場合、飼い主様が異変に気づくまでに時間がかかってしまうことも少なくありません。しかし、様子を見ているうちに状態が悪化し、命に関わるような深刻な病気が見つかるケースもあります。
「なんとなく元気がない」「少し気になるかも」と感じたときは、早めに動物病院を受診し、必要な検査を受けることが大切です。
検査と診断の流れ
犬や猫の貧血にはさまざまな原因があるため、見た目の症状だけでは正確な判断ができません。体の中で何が起きているのかをきちんと把握するためには、必要な検査を通じて原因を明らかにすることが大切です。
原因の特定は、以下のような流れで進めていきます。
◆問診・触診
まずは飼い主様から、愛犬・愛猫の普段の様子や気になる変化について、お話を伺います。
そのうえで、粘膜の色、心拍や呼吸の状態、全身の緊張感や反応などを確認していきます。
◆血液検査
赤血球やヘモグロビンの濃度を測定し、貧血の有無や重症度を評価します。
また、血液を顕微鏡で詳しく観察することで、赤血球の形や分布から疾患の傾向を探ることもあります。
◆画像検査
レントゲンやエコーを使って、内臓の状態や腫瘍・出血の有無などを調べます。
必要に応じて、より詳細な確認のためにCT検査をご提案する場合もあります。
◆その他の精密検査(必要に応じて)
猫の場合は、FIV(猫エイズ)やFeLV(猫白血病)といったウイルス検査を実施することがあります。また、造血の仕組みに問題が疑われるときには、骨髄の検査を行うケースもあります。
かすみペットクリニックでは、愛犬・愛猫にとってできるだけ負担の少ない方法を選びながら、一つひとつの検査を丁寧に行い、正確な診断に基づいた治療につなげることを大切にしています。
また、輸血が必要と判断された場合には、専門の医療機関をご紹介し、連携して対応できる体制を整えておりますので、ご安心ください。
<早期発見のメリット>
原因が早く特定できれば、それだけ早く適切な治療に進むことができます。
特に貧血は、背後にある病気によって治療法が大きく変わるため、早い段階で状況を正しく把握することが、愛犬・愛猫の健康を守る第一歩になります。
まとめ
貧血は、犬や猫の命にかかわる病気のサインであることもあるため、早期発見・早期診断が何より大切です。
かすみペットクリニックでは、飼い主様のお話を丁寧にお聞きし、必要な検査を通じて、愛犬・愛猫の体の中で何が起きているのかを正確に把握することを大切にしています。
「ちょっと心配かも」と感じたときが受診のタイミングです。どうぞお気軽にお問い合わせください。
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