「最近、帰宅してもお迎えに来ない」「壁をじっと見つめたまま動かない」「足取りがふらついている気がする」そんな愛猫のちょっとした変化に、不安を感じたことはありませんか?
猫は体調の変化を隠すのがとても上手な動物です。特に神経に関わる病気は、見た目ではわかりにくく、ごく小さな行動の変化が最初のサインになることが多いのです。
今回は、猫に見られる神経症状の特徴と、飼い主様ができる早期発見のポイントについて解説します。
■目次
1.猫の神経症状とは?見逃しやすい体のSOS
2.神経症状の主な原因とは?
3.おうちで気づきやすい神経症状のサイン
4.すぐに病院へ!危険な症状
5.動物病院での検査と治療
6.日常でできるケアと予防の工夫
7.まとめ
猫の神経症状とは?見逃しやすい体のSOS
神経症状とは、脳や脊髄、末梢神経の異常によって、体の動きや行動、反応に変化があらわれる状態のことをいいます。
神経は、体と脳をつなぐ大切な役割を担っているため、異常が起こると、ほんの少しの仕草や行動の変化としてサインがあらわれることがあります。しかし、見た目では分かりにくいことが多く、気づかれにくいのが特徴です。
こうした神経症状は、放置すると進行や悪化のリスクがありますが、早めに気づいて治療を始めることで、症状を抑えたり改善につなげられる可能性も十分にあります。ちょっとした違和感に気づいてあげられるのは、いつもそばにいる飼い主様だからこそ。早めの発見と受診が、愛猫の健康を守る大切なカギとなります。
神経症状の主な原因とは?
猫に神経症状が出る原因はさまざまですが、代表的なものは次のとおりです。
原因 | 具体例 |
---|---|
脳の病気 | 脳腫瘍、てんかん、脳炎 |
感染症 | 猫伝染性腹膜炎(FIP)、トキソプラズマ症 |
代謝異常 | 低血糖、肝臓や腎臓の異常による脳への影響 |
ケガや外傷 | 高いところからの落下、交通事故 |
中毒 | 人間の薬や観葉植物、一部の食品による影響 |
これらの原因により、行動や運動、意識レベルに異常があらわれます。
▼猫の猫伝染性腹膜炎(FIP)についてはこちらで解説しています
猫の元気がない、食欲がない?|猫のFIP(猫伝染性腹膜炎)について
おうちで気づきやすい神経症状のサイン
猫の神経症状は、最初は「ちょっとした変化」や「いつもと違う行動」としてあらわれることがほとんどです。特に猫は我慢強い動物なので、はっきりとした異常が見えるころには、すでに症状が進行している場合も少なくありません。だからこそ、日常生活の中での小さな違和感に早めに気づいてあげることがとても大切です。
特に注意してほしい行動や様子には次のようなものがあります。
・顔がいつも斜めを向いている
・壁に頭を押しつけて動かない
・ぐるぐる同じ方向に回る
・足元がふらつく、立てない
・顔や体の一部がピクピク動く
・ぐったりして動かない
これらのサインは、神経の異常を知らせる大事なSOSかもしれません。
少しでも「あれ?」と感じたら、できるだけ動画に残し、悪化する前に早めに動物病院へ相談することをおすすめします。
すぐに病院へ!危険な症状
猫の神経症状の中には、命に関わるような緊急性の高いものも存在します。次のような症状が見られた場合は、できるだけ早急に受診しましょう。
・反応が鈍い、呼びかけに反応しない
・けいれんが5分以上続く、または何度も繰り返す
・呼吸が荒く、苦しそうにしている
・突然倒れる、起き上がれない
神経症状は進行が早いケースも多く、早めの対応がその後の回復や予後に大きく影響します。「大げさだったらどうしよう…」と迷う必要はありません。少しでも不安を感じたときは、まずは動物病院に連絡し、専門家の判断を仰ぐようにしてください。
動物病院での検査と治療
猫の神経症状は原因が多岐にわたるため、正確な診断には獣医師による総合的なチェックが欠かせません。当院では、まず丁寧な問診と身体検査を通じて、症状の出方や猫の普段の様子を詳しく伺いながら、原因の手がかりを探していきます。必要に応じて、以下のような検査を組み合わせて診断を進めます。
・血液検査:代謝異常や中毒の有無を確認
・X線検査:骨折や頭部の外傷をチェック
・超音波検査:内臓疾患が関係していないかを確認
・MRI検査:脳や脊髄の状態を詳しく確認(※必要に応じて専門施設を紹介します)
治療は原因によってさまざまですが、抗てんかん薬や抗炎症薬の使用、感染症治療、生活管理などを適切に組み合わせて行います。特にてんかんや脳炎などの場合は、治療開始後も長期的な経過観察やお薬の継続が必要になることがあります。
神経症状は原因がわかれば改善が期待できるケースも少なくありません。早めの受診と適切な治療により、愛猫が穏やかな日常を取り戻せる可能性もあります。
日常でできるケアと予防の工夫
猫の神経症状は、動物病院での治療だけでなく、日常生活の中でのちょっとした工夫やケアが症状の早期発見・悪化予防につながります。特に神経系の異常は、目に見える変化が少ないからこそ、飼い主様が普段から愛猫の様子を丁寧に見守ることが、とても大切です。
<こんな工夫がおすすめです>
・普段の行動や歩き方、食事・排泄の様子をよく観察する
・「いつもと違う」と感じた行動は動画で記録しておく
・高い場所や危険な段差を減らし、ケガのリスクを減らす
・誤食・中毒予防のため、危険なものは片付けておく
・ストレスを減らすため、静かで安心できる環境を整える
特に「動画での記録」は、診察時にとても役立つ情報になります。気になる行動があれば、ぜひスマートフォンなどで撮影しておくことをおすすめします。
また、病気の予防や早期発見の観点では、定期的な健康診断も大きな助けになります。まだ症状が出ていない段階でも、体の変化にいち早く気づけるきっかけになるからです。
毎日の暮らしの中で愛猫の小さな変化に目を向け、気になることがあれば相談する――その積み重ねが、健康寿命をのばす大きな力になります。
まとめ
猫の神経症状は、最初はとても小さな変化から始まります。だからこそ、飼い主様の「いつもと違うかも?」という気づきがとても大切です。
かすみペットクリニックでは、神経症状を含めた幅広い診療に対応しており、必要に応じて専門施設との連携も行っています。愛猫の「なんとなく変かも?」というサインを見つけたら、お気軽に当院までご相談ください。
埼玉県狭山市の「かすみペットクリニック」