「FIPかもしれない」と言われたり、インターネットで調べて不安を感じたりしている飼い主様もいらっしゃるのではないでしょうか。
FIP(猫伝染性腹膜炎)は、猫にとって重い病気の一つであり、診断が難しいことでも知られています。そのため「どんな検査で分かるのか」と疑問に思われることも多いかと思います。
近年の研究では、画像検査から分かる情報について少しずつ整理されてきています。レントゲン検査だけでFIPを確定することはできないものの、診断を考えるうえで重要なヒントになることがあるのです。
そこで今回は、FIPにおけるレントゲン検査の役割や、実際にどのような異常が見られるのかについてご説明します。


■目次
1.FIP(猫伝染性腹膜炎)とは?
2.FIPの診断にレントゲンはどう役立つ?
3.レントゲンだけでFIPは診断できる?実際の診断の進め方
4.こんな症状があるときは早めの相談を
5.まとめ|レントゲンは“診断のヒント”になる大切な検査
FIP(猫伝染性腹膜炎)とは?
FIPは、猫コロナウイルスが体内で変異することで発症する病気です。若い猫に多く見られ、全身に炎症を起こすことが特徴です。
大きく分けて、次の2つのタイプがあります。
・体に水がたまる「ウェットタイプ」
・はっきりした水はたまらない「ドライタイプ」
▼猫のFIPについてはこちらで詳しく解説しています
猫の元気がない、食欲がない?|猫のFIP(猫伝染性腹膜炎)について
FIPは確定診断のために組織検査が必要とされることが多く、簡単に診断できる病気ではありません。そのため実際の診療では、症状や血液検査、画像検査などを組み合わせて、総合的に判断しながら診断や治療を進めていくケースが多くなります。
その中でもレントゲン検査は、体の中で起きている変化を確認するための重要な手段の一つです。
FIPの診断にレントゲンはどう役立つ?
近年、FIPと診断された猫のレントゲン所見をまとめた研究が報告されており、レントゲンでどのような異常が見られるのかが少しずつ明らかになってきています。2025年に発表された研究では、FIPと診断された猫のうち約9割でレントゲン上の異常が確認されています。
ここでは、代表的な所見についてご紹介します。
<胸水>
胸の中に水がたまる「胸水」は、FIPで比較的よく見られる変化の一つです。胸水が増えると肺が十分に広がらなくなり、呼吸がしづらくなる原因になることがあります。
研究では約37%の猫で胸水が確認されており、左右どちらかだけの場合もあれば、両側にたまる場合もあります。
<肺の異常>
肺の変化は特に多く、約7割の猫で異常が見られています。主なパターンとしては、次のようなものがあります。
・間質性パターン:肺が全体的にぼんやり白く見える
・気管支パターン:気管支が強調されて見える
・肺胞パターン:より白く濃く見える部分がある
これらは、炎症や水分の影響によって、通常は空気で黒く見える肺が白っぽく映ることで確認されます。
<リンパ節の腫れ>
胸の中にあるリンパ節が腫れる所見も比較的よく見られ、約45%の猫で確認されています。リンパ節の腫れは、体の中で炎症が起きているサインの一つと考えられます。
<心臓の変化>
約17%の猫では、心臓が大きく見える(心拡大)所見が確認されています。
これは、
・心筋炎(心臓の炎症)
・心嚢水(心臓の周りに水がたまる状態)
・貧血による影響
などが関係していると考えられています。
<その他の所見>
そのほかにも、次のような所見が確認されることがあります。
・肺の中に小さな結節(しこり)が見られる
・血管の太さや形に変化がある
これらの変化は単独ではなく、複数が組み合わさって見られるケースが多いことも特徴です。
レントゲンだけでFIPは診断できる?実際の診断の進め方
ここまでご紹介したように、レントゲン検査ではさまざまな変化が見られることがありますが、それだけでFIPと断定することはできません。
実際に、レントゲンで異常が見られなかった猫も一定数存在しており、約8%は正常に見えるケースも報告されています。また、レントゲンで見られる変化はFIPに特有のものではなく、肺炎や腫瘍、心臓の病気などでも似た所見が現れることがあります。
そのため「レントゲンで異常がある=FIP」というわけではありません。レントゲン検査はあくまで「診断を後押しする材料の一つ」として位置づけられます。
実際の診断では、
・症状や経過
・血液検査
・画像検査(レントゲンや超音波)
・必要に応じた追加検査
を組み合わせながら、体への負担にも配慮して段階的に評価していきます。
こんな症状があるときは早めの相談を
FIPが疑われる猫では、次のような様子が見られることがあります。
・食欲が落ちている
・元気がない
・発熱が続く
・呼吸が速い、苦しそう
・体重が減ってきている
こうした変化が見られる場合は、早めに動物病院で状態を確認しておくことで、その後の対応につなげやすくなります。
また、すでに動物病院でFIPの可能性を指摘されている場合や、検査や治療について迷われている場合もあるかと思います。そのようなときには、現在の検査結果や経過をもとに、別の視点から状態を整理することも一つの選択肢です。
当院では、これまでの情報を丁寧に確認しながら、現在の状態や今後の見通しについて分かりやすくご説明することを大切にしています。初めての受診だけでなく、セカンドオピニオンとしてのご相談にも対応していますので、気になることがあればご相談ください。
まとめ|レントゲンは“診断のヒント”になる大切な検査
FIPは診断が難しい病気ですが、レントゲン検査によって体の中の変化を確認することで、診断の手がかりを得られることがあります。一方で、レントゲンの結果だけで診断を確定することはできないため、ほかの検査結果とあわせた総合的な判断が重要です。
また、FIPは進行によって状態が変わりやすく、様子を見ている間に状況が進んでしまうこともあります。気になる症状がある場合や、検査や診断について不安がある場合は、お早めにご相談ください。
【参考文献】Repyak K, Atiee G, Cook A, et al. Thoracic radiographic findings in cats with feline infectious peritonitis. Journal of Feline Medicine and Surgery, 2025.
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