「最近、お腹をよく舐めているな」「咳が増えたかも」「お腹がゆるい日が多いけど、元気そうだから大丈夫かな…」このような愛猫の様子に心当たりはありませんか?
実はこれらの症状が、すべてひとつの原因で起きているかもしれないことをご存じでしょうか?近年注目されている「猫のアトピー症候群(Feline Atopic Syndrome:FAS)」は、皮膚・呼吸器・消化器など複数の場所に症状が現れるアレルギー疾患です。
今回は、当院が診療の現場で大切にしている「総合的な視点」から、猫のアトピー症候群(FAS)の特徴と診断・治療について解説します。
■目次
1.猫のアトピー症候群(FAS)とは?
2.猫のアトピー症候群で見られる主な症状
3.見逃されやすい初期サインに注意
4.診断と治療の進め方
5.おうちでできる対策
6.まとめ
猫のアトピー症候群(FAS)とは?
猫のアトピー症候群とは、猫にアレルギー反応が起こることで、皮膚だけでなく、呼吸器や消化器などにも症状があらわれる病気です。
従来は「猫のアトピー=皮膚のかゆみ」というイメージが強かったのですが、近年では国際動物アレルギー疾患委員会(ICADA)により、皮膚以外の症状も含めた「猫のアトピー症候群(FAS)」という新しい考え方が示されています。
猫のアトピー症候群は、皮膚・呼吸器・消化器といった一見バラバラに見える症状が、実はひとつの病気としてつながっている可能性がある点が大きな特徴です。
「治療しているのになかなか良くならない」「いろいろな症状が出てきた」という場合には、このような全身的な病気が関係していることもあります。こうした視点を持つことで、より適切な治療につながるケースが増えており、注目されている疾患です。
猫のアトピー症候群で見られる主な症状
具体的には、次のような症状が組み合わさって現れることが特徴です。
<皮膚症状>
・お腹や足を執拗に舐める
・耳や顔をかく
・かさぶたや脱毛
・慢性的な皮膚炎や湿疹
<呼吸器症状>
・咳やくしゃみが続く
・ゼーゼー、ヒューヒューといった呼吸音
・息苦しそうにする
<消化器症状>
・下痢や軟便が長く続く
・嘔吐
・食欲のムラがある
これらは一見バラバラに見えますが、実は猫のアトピー症候群によるアレルギー反応が原因になっていることも多いのです。
見逃されやすい初期サインに注意
猫のアトピー症候群の症状は軽度のうちは「毛玉かな?」「ちょっとしたかゆみかな?」と見過ごされがちです。実際によくある誤解は次のようなものです。
・お腹を舐めるのは暇だから…
・咳は毛玉を吐きたいから…
・下痢はフードが合わないだけ…
もちろん単独で起きることもありますが、これらが長引いたり、複数の症状が重なっている場合は注意が必要です。
特に「単なるアレルギー」と考えて皮膚だけの治療にとどまっていると、本来の原因にたどり着けず、症状が慢性化してしまうことがあります。症状が軽いうちに正しい診断と治療を行えば、猫の負担も小さく、早い改善が期待できます。「なんとなく気になる症状が続いている」という場合は、早めに動物病院に相談することをおすすめします。
診断と治療の進め方
猫のアトピー症候群は、一つの症状だけで判断することが難しい疾患です。かすみペットクリニックでは、まず丁寧な問診と診察を行い、必要に応じて以下のような検査を組み合わせながら、それぞれの症状の“つながり”や“原因”を探っていきます。
・皮膚検査:細菌・真菌・寄生虫の確認
・血液検査:健康状態やアレルギー指標の確認
・糞便検査:寄生虫や消化状態のチェック
・アレルゲン検査:原因となる物質の特定
猫のアトピー症候群では、皮膚・呼吸器・消化器など複数の症状が出ることが多く、それらを個別に治療するだけでは、根本的な改善にはつながりません。
そのため当院では、全身を総合的に診て、症状の裏にある「アレルギー反応」や「体質そのもの」へのアプローチを大切にしています。特に猫のアトピー症候群の治療では、薬による症状のコントロールに加えて、アレルゲン(原因物質)の特定と、それを遠ざける生活環境の工夫が欠かせません。
こうした「治療+環境整備+体質改善」を組み合わせた対応が、猫のアトピー症候群をうまくコントロールするカギになります。
おうちでできる対策
猫のアトピー症候群は、日常生活の中にあるアレルゲンへの対策や、体調の変化に気づくことがとても重要です。ここではご自宅で取り組めるケアのポイントをご紹介します。
<環境を整える>
ハウスダストやカビ、ダニなどのアレルゲンは、普段の暮らしの中に多く存在しています。再発や悪化を防ぐために、次のような対策が効果的です。
・こまめな掃除と換気
・寝具やカーペットの洗濯
・空気清浄機や除湿機の活用
・猫がよく過ごす場所を清潔に保つ
<食事管理も大切>
食事がアレルギー反応に関係している場合もあります。アレルゲン除去食や消化に優しいフードなど、愛猫に合った食事管理が効果的です。獣医師と相談しながら進めましょう。
<日々の観察とケア>
猫のアトピー症候群は慢性的に付き合っていく病気です。ちょっとした変化を見逃さないことが、早めの対応につながります。「いつもと違うかな?」と感じたら、早めに動物病院に相談することをおすすめします。
まとめ
猫のアトピー症候群(FAS)は、皮膚・呼吸器・消化器の症状が別々に見えて、実は一つの原因でつながっている可能性がある病気です。早期の正確な診断と適切な治療によって、愛猫が毎日を快適に過ごせるようになることが期待できます。
「何となく不調が続く」「いろんな症状が出ているけれど、原因がわからない」そんなときは、お気軽に当院までご相談ください。多方面から猫の健康状態を評価し、愛猫に合った最適な治療や生活のアドバイスをご提案します。
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埼玉県狭山市の「かすみペットクリニック」