お知らせ

愛犬の皮膚に赤みや膿が?膿皮症の症状と治療法

愛犬の皮膚に赤みやブツブツが見られ、かゆがっている様子に不安を感じたことはありませんか?その症状は「膿皮症(のうひしょう)」という皮膚の細菌感染が原因かもしれません。

膿皮症は犬によく見られる皮膚トラブルのひとつで、初期段階では軽い赤みや小さな発疹として現れます。しかし、放置すると膿がたまったり皮膚がただれてしまうこともあり、治療が長引くことも少なくありません。特に皮膚が敏感な犬種や、免疫が弱い犬は発症しやすい傾向があります。

今回は、膿皮症の原因や症状、治療法、そして日常的なケアのポイントまで詳しく解説します。

■目次
1.膿皮症の基礎知識
2.主な症状
3.発症の原因
4.診断方法
5.治療方法
6.予防とケア方法
7.注意が必要なポイント
8.まとめ

膿皮症の基礎知識


膿皮症は、皮膚に常在する「ブドウ球菌」などの細菌が異常に増殖することで発症します。健康な皮膚はバリア機能によって細菌の増殖を防いでいますが、免疫力の低下や湿気、皮膚の乾燥などがバリア機能の低下を引き起こし、細菌が増えすぎてしまうのです。

膿皮症が発症しやすい部位は、お腹脇の下内股指の間耳の付け根など湿気がこもりやすく、細菌が繁殖しやすい場所です。特にシーズーフレンチ・ブルドッグパグなどの短毛種や皮膚のシワが多い犬や、柴犬などの皮膚が敏感な犬種は注意が必要です。

また、若齢犬(1歳未満)は免疫機能が未発達で、高齢犬は免疫力が低下しているため、膿皮症を発症しやすい傾向があります。

主な症状


膿皮症は、進行の程度によって「表在性膿皮症」と「深在性膿皮症」に分類されます。表在性は皮膚の表面に炎症が起きる軽度のもの、深在性は炎症が皮膚の深い部分にまで進行した状態です。

初期の段階では見逃されやすい軽い症状から始まり、進行すると愛犬に大きな負担をかけることもあります。そのため、症状の変化をしっかりと理解し、症状が軽いうちに気づいてあげることが、悪化を防ぐポイントとなります。

▼初期症状
皮膚の赤み(発赤)
小さなブツブツ(丘疹)
軽いかゆみ

この段階では、日常のスキンケアと清潔な環境を心がけることで改善する場合もあります。

▼進行した場合に見られる症状
膿を含む発疹(膿疱)
かさぶた(痂皮)
脱毛

ここまで進行すると、自然に治ることは難しくなります。早めに動物病院を受診しましょう。

<重症化のサイン>
さらに症状が進むと、深在性膿皮症へと移行し、治療が難しくなる場合があります。以下のような症状が現れた場合は、すぐに獣医師へ相談することをおすすめします。

皮膚がただれる、ジュクジュクする
触れると痛がる
発熱や食欲不振などの全身症状

膿皮症は、初期のうちに気づいて対処することで悪化を防げる可能性があります。日頃から愛犬の皮膚をこまめにチェックするようにしましょう。

発症の原因


膿皮症は、皮膚に常在するブドウ球菌が異常に増殖することで発症します。皮膚のバリア機能が弱まると、細菌感染が起こりやすくなります

<基礎疾患との関係>
膿皮症は、以下のような基礎疾患があると発症しやすくなります。

アレルギー性皮膚炎:皮膚が炎症を起こし細菌が繁殖しやすくなります。
寄生虫感染ノミダニのかゆみによる掻き壊しが感染のきっかけになることも。
ホルモン異常クッシング症候群甲状腺機能低下症は、皮膚のバリア機能を弱めます。

<生活環境の影響>
湿気が多い季節は皮膚が蒸れやすく、細菌が繁殖しやすくなり、刺激の強いシャンプーやすすぎ不足、乾燥といった、不適切なグルーミングも皮膚のバリア機能を低下させる一因となります。

また、ひっかき傷や擦り傷などの小さな傷口から細菌が侵入して発症することもあります。膿皮症は、さまざまな要因が重なることで発症するため、日常のケアや環境管理、基礎疾患の適切な管理を行うことが予防につながります。

診断方法


膿皮症は、症状が他の皮膚疾患と似ていることも多いため、さまざまな視点から、段階を踏んで原因を特定していきます。

<問診・視診とにおいのチェック>
診察ではまず、皮膚の状態を目で見て確認し、かゆみの程度や発症時期、症状の経過など、愛犬の様子を詳しく伺います。

また、膿皮症は細菌感染に特有の不快なにおいを発することがあります。当院では、この「におい」も診断の重要な手がかりと考えています。そのため、来院時にはシャンプーを控えていただくようにお願いしています。

<各種検査>
膿皮症は、アレルギー性皮膚炎や疥癬、アカラスなどの皮膚疾患と症状が似ているため、誤診を防ぐためにも複数の検査を組み合わせて慎重に診断を進めます。

細菌検査:患部を綿棒などでこすり取り、顕微鏡で観察します。
基礎疾患の検査:基礎疾患が疑われる場合には、追加の検査を行います。

▼必要に応じた追加検査
アレルギー検査:食物アレルギーや環境アレルゲンを特定します。
皮膚掻爬検査:ノミやダニなどの寄生虫感染の有無を確認します。
血液検査:ホルモン異常や全身状態を調べ、基礎疾患がないかをチェックします。

膿皮症は、他の皮膚疾患と症状が似ていることも多く、正確な診断がとても大切です。当院では、視診や各種検査を通じて、必要なステップを踏みながら丁寧に診断を進めています

治療方法


膿皮症の治療は、細菌感染を抑えることが基本となります。しかし、基礎疾患がある場合や再発を繰り返す場合には、原因に合わせた対処が必要です。症状の程度や原因に応じて、外用薬や内服薬、スキンケアなど、さまざまな方法を組み合わせて治療を進めていきます。

・抗菌薬による治療
膿皮症の主な治療は、細菌の増殖を抑える抗菌薬の使用です。軽度の膿皮症には外用薬(塗り薬)を使用し、症状が広範囲または深刻な場合は内服薬(抗生物質)を用います。

・基礎疾患の治療
アレルギー性皮膚炎やホルモン異常が膿皮症の原因となる場合は、それらの疾患も併せて治療します。根本的な原因に対処することで再発リスクを抑えます。

・シャンプー療法
抗菌作用のあるシャンプーで皮膚を清潔に保ち、細菌の繁殖を防ぎます。ただし、洗いすぎやすすぎ不足は皮膚のバリア機能を弱めるため、獣医師の指導のもと適切に行いましょう。

<治療期間と経過観察>
膿皮症の治療は、症状が落ち着いた後も一定期間継続することが大切です。自己判断で治療をやめてしまうと、再発のリスクが高まります。症状の経過をしっかりと観察し、治療が終了するタイミングは獣医師と相談しながら進めていきましょう。

予防とケア方法


膿皮症は、治療だけでなく日常的なケアや環境管理を行うことで予防と再発防止につながります。一度治っても再発しやすい病気のため、愛犬の皮膚を健康に保つためのポイントを意識していきましょう。

<日常的なスキンケア>
膿皮症の予防には、日常的なスキンケアが欠かせません。皮膚を清潔に保つことが、細菌の繁殖を防ぎます。

・適切なシャンプー
週に1〜2回を目安に、泡で優しく包み込むように洗い、シャンプー成分が皮膚に残らないようにしっかりすすぎましょう。洗った後はドライヤーでしっかり乾かし、湿気が残らないようにします。

・保湿ケア
乾燥は皮膚のバリア機能低下につながります。愛犬の皮膚に合った保湿剤を使い、特に乾燥しやすい季節は念入りにケアしましょう。

・ブラッシング
優しくブラッシングを行い、毛のもつれや汚れを防ぎます。適度な刺激は血行促進にもつながり、皮膚の健康維持に役立ちます。

<環境と食事の管理>
愛犬の皮膚を守るためには、日常生活の環境や食事にも配慮が必要です。

・快適な環境づくり
寝床やクッションはこまめに洗い、清潔を保ちましょう。通気性の良い素材を選び、皮膚の蒸れを防ぎます。室内の湿度は50〜60%を目安に、エアコンや除湿器・加湿器で調整するのがおすすめです。

・食事管理の工夫
オメガ3脂肪酸(EPA・DHA)を含むフードは皮膚の健康維持に役立ちます。必要に応じてサプリメントの利用も検討しましょう。

日々のちょっとしたケアと管理の積み重ねが、膿皮症の予防と再発防止につながります。毎日の習慣として取り入れ、愛犬の健康な皮膚を守っていきましょう。

注意が必要なポイント


膿皮症は適切な治療で改善が期待できますが、膿皮症の重症化や再発のリスクを軽減するために、いくつか注意が必要な点があります。愛犬の負担を減らすためにも、正しい知識を持っておくことが大切です。

・慢性化のリスク
治療を中断すると、膿皮症が慢性化しやすくなります。自己判断で治療をやめることは避け、症状が完全に治まるまで獣医師の指導に従いましょう

・抗菌薬耐性菌に注意
抗菌薬の誤った使用は、薬が効きにくい「耐性菌」を生むリスクがあります。抗菌薬は獣医師の指示に従い、決められた期間しっかりと投与しましょう。自己判断での中断や、残った薬の再使用は避けてください。

・重症化のリスク
基礎疾患がある場合や、高齢による免疫力の低下がある犬は、膿皮症が重症化しやすい傾向にあります。異変を感じたら、早めに獣医師に相談することが重要です。

まとめ


膿皮症は早期発見と適切なケアで改善が期待できる皮膚疾患です。かゆみや赤みが見られた際は、早めに獣医師に相談し、繰り返す場合は基礎疾患にも目を向けましょう。また、定期的な健康診断は膿皮症の予防や早期発見に役立ちます。皮膚だけでなく全身の健康チェックを行い、隠れたリスクにも早く気づくことが大切です。

当院では、丁寧な問診と検査を通じて、愛犬の状態に合わせた治療をご提案しています。皮膚トラブルでお悩みの飼い主様は、お気軽にご相談ください。

■関連する病気はこちらで解説しています
犬や猫の皮膚のかゆみトラブル|症状から考えられる病気と受診のタイミング
犬や猫の脱毛の原因や危険性は?|見逃せない症状と治療について解説
犬のアトピー性皮膚炎に悩む飼い主様へ|症状と治療法を獣医師が詳しく解説

埼玉県狭山市の「かすみペットクリニック」

診察案内はこちら


ページトップ