ある日突然、愛犬が痙攣を起こしたり、意識を失ったりすると、驚いてパニックになることもあるかもしれません。
しかし、発作について正しく理解して冷静に対処することで、適切なケアやサポートを行うことができます。
今回は、犬の発作についての基礎知識をお伝えし、似た症状との違いや冷静に対応するためのポイントをご紹介します。
■目次
1.発作とは?
2.犬の発作にはどんな種類がある?|原因を知って正しく対処
3.発作かどうかを見分けるポイント|虚脱や失神との違いとは?
4.発作の具体的な特徴
5.診断方法
6.発作が起きた時の対処法
7.発作時の記録の取り方
8.まとめ
発作とは?
医学的には「発作」とは、ある症状が一過性に突然現れることを指します。
具体的には、てんかん発作、心臓発作、喘息発作、代謝性発作などが挙げられますが、犬の発作でよく見られるのは「てんかん発作」です。
犬の発作は、数秒から数分程度続くことが多いですが、その持続時間や症状の強さには個体差があります。発作の原因としては、てんかんや脳の疾患(脳炎、腫瘍、外傷など)、あるいは代謝異常(低血糖や肝機能の異常など)が考えられます。
発作が頻繁に起こる場合や、発作の時間が長引く場合には、できるだけ早く動物病院を受診することが重要です。
犬の発作にはどんな種類がある?|原因を知って正しく対処
犬の発作にはいくつかの種類があり、それぞれ原因が異なります。
愛犬に発作が起きたときは、どのような症状やタイプの発作かを把握することが、適切な治療への第一歩です。
ここでは、主な発作の種類と原因について解説します。
・てんかん
てんかん発作とは、大脳内の異常な電気信号によって引き起こされる一時的な神経の乱れのことです。突然、体が痙攣したり、意識が朦朧としたりして反応がなくなるといった症状が現れます。
原因不明の「特発性てんかん」が多く、遺伝的要因が関係していることがあります。
・脳の疾患
脳炎、腫瘍、外傷など、脳の構造的な異常が原因となる場合です。
・代謝性発作
脳以外の疾患が原因で発作が引き起こされる場合です。低血糖や肝機能の異常、腎不全など、体内の代謝に問題があると発作が引き起こされることがあります。
・中毒
農薬や除草剤、チョコレート、キシリトール、化学物質の誤飲などが原因で発作が起こることがあります。中毒症状では、発作のほかに嘔吐や下痢が見られます。
発作かどうかを見分けるポイント|虚脱や失神との違いとは?
発作に似た症状はいくつかありますが、代表的なものとして「虚脱」と「失神」が挙げられます。
<虚脱>
虚脱とは、急に力が入らなくなり、その場に崩れ落ちてしまう状態です。発作と混同されやすいですが、意識があることが多いのが特徴です。
虚脱の場合、痙攣や硬直は見られず、犬は横になったままぼんやりしていますが、呼びかけには反応することがあります。
原因としては、心臓の異常や血流の低下、低血糖などが考えられます。愛犬が突然倒れた場合でも、虚脱か発作かを見分けることで、動物病院での診断の手がかりになります。
<失神>
失神は、一時的に脳への血流が不足し、意識を失う状態です。失神後は比較的早く意識が戻り、通常の状態に戻ることが多いのが特徴です。
発作との大きな違いは、痙攣や震えがほとんど見られない点です。発作の場合、意識がなくなると同時に体が震えたり、手足が硬直したりすることが多いですが、失神ではそのような症状は少なく、静かに倒れることがほとんどです。
発作の具体的な特徴
発作が起きた時、確認しておくべき具体的なポイントは以下の通りです。
・痙攣や震え
全身、または一部の筋肉が強く収縮し、体が震えたり痙攣したりします。手足をバタバタさせるような動きが見られることもあります。
・意識の消失
発作中は意識がなくなることが多く、飼い主様が呼びかけても反応しない状態になります。
・口から泡を吹く
発作が起きると唾液が多く分泌されることがあり、結果として口から泡を吹いているように見えることがあります。
・排尿や排便(失禁)
発作中は筋肉の制御が効かなくなるため、失禁してしまうことがあります。
・発作後の様子
発作が収まった後、犬は混乱した様子を見せることが多く、ぼんやりとした表情になったり、歩き方がふらついたりすることがあります。
診断方法
犬が発作を起こした場合、獣医師は以下のステップで診断を進めていきます。発作の原因を特定するには、さまざまな可能性を一つずつ探りながら、特定の病気の可能性を排除していく必要があり、複数の検査が必要になることもあります。
<問診>
まずは飼い主様から、発作の状況について詳しくお話を伺います。獣医師がよく確認するポイントは以下の通りです。
・発作が起きた時間帯や、どのくらい続いたか
・発作中の様子(全身の痙攣や意識があったかどうか)
・発作の前後で見られた行動(ぼんやりしていた、歩き方が不自然だった等)
・発作が起きる頻度や直前の状況
<身体検査>
愛犬の体全体を隅々までチェックし、心音や呼吸、体温を測定します。
また、脳や神経に異常がないかを確認するために以下のような神経学的な検査も実施します。
・反射のチェック:足や顔を軽く触って反応を見る
・歩き方の確認:ふらつきや片側の動きに違いがないか観察
・目の検査:目の動きや光への反応をチェック
・意識の確認:呼びかけや痛みに反応するか確認
<血液検査>
発作の原因が代謝異常(低血糖や肝臓、腎臓の病気など)によるものかどうかを調べるため、血液検査を行います。血液中の異常な数値が見つかれば、全身の病気が関係している可能性があります。
<画像検査(レントゲン・CT・MRI)>
脳の病気が疑われる場合、CTやMRIを用いて頭部を詳しく調べます。脳腫瘍や脳炎、外傷がないかを確認し、異常がある部位を特定します。
<脳脊髄液検査>
中枢神経系に炎症や感染が起きている場合は、脳脊髄液を採取して検査します。
発作が起きた時の対処法
愛犬が突然発作を起こすと、驚いてパニックになることもあるかもしれません。そんな時こそ、落ち着いて冷静に対応することが大切です。
〇まず落ち着いて確認すること
・安全な場所を確保する
愛犬が家具や壁にぶつからないよう、周囲の障害物を取り除きましょう。できるだけ安全なスペースを作ることが大切です。
・時間を記録する
発作が始まった時間を確認し、終わるまでの時間を記録しましょう。時間の長さは診断の重要な手がかりになります。
〇やってはいけないこと
・口の中に手を入れない
発作中の愛犬は無意識の状態で噛んでしまうことがあります。危険ですので、口の中に手を入れないようにしましょう。
・体を強く揺さぶらない
発作中は愛犬の意識がなく、反応することができません。無理に体を動かすと、かえって危険な場合があるので避けましょう。
〇病院に連れて行くタイミング
以下のような場合は、すぐに動物病院を受診してください。
・発作が5分以上続く(長時間の発作は命に関わる可能性があります)
・発作が短時間でも何度も繰り返し起こる
・発作後に意識が戻らない、または異常な行動が続く
〇獣医師に伝えるべき情報
診察時には、以下の情報を獣医師に伝えると、診断がスムーズに進みます。
・発作の頻度と持続時間
・発作中の様子(体の動き、意識の有無、泡を吹いたか等)
・発作が起こる直前の状況(食事、運動、ストレスなど)
・発作後の様子
・これまでの病歴や服用している薬
発作時の記録の取り方
愛犬に発作が起きたら、落ち着いて様子を記録し、獣医師に伝えることが大切です。正確な記録が診断や治療をスムーズに進めるために役立ちます
<動画撮影のポイント>
発作が起きたら、スマートフォンやカメラで動画を撮影しましょう。動画があれば、愛犬の状態を正確に獣医師に伝えることができ、診断の助けになります。
・安全を最優先にする
まずは、愛犬がぶつかりそうな物を避け、安全な場所を確保します。無理に近づいて撮影する必要はありません。
・できるだけ全体を映す
愛犬の全身が映るように撮影すると、手足の動きや体の硬直具合、痙攣の様子が分かりやすくなります。
・周囲の環境も記録
発作の際、音や匂い、周囲の状況が影響することもあります。直前の様子や物音も映るよう意識すると、診断のヒントになることがあります。
<記録しておくべき項目>
動画が撮れなくても、発作の様子をメモに記録しておくことで、獣医師が診断を進めやすくなります。以下の項目をできるだけ詳しく書き留めましょう。
1.発作が起きた日時
発作が起きた日付と時間を記録します。何時頃に起こったのか、1日のどのタイミングかも重要です。
2.発作の持続時間
発作が始まってから終わるまでの時間を正確に測りましょう。発作が長く続く場合は、重篤な状態の可能性があるため注意が必要です。
3.発作の様子
発作中の愛犬の具体的な状態を記録します。
・痙攣の有無(全身または部分的な痙攣)
・意識があったかどうか
・手足の動き(バタバタ動かす、硬直するなど)
・口から泡を吹いたか、失禁があったか
4.発作の前後の状態
発作が起こる直前や直後の様子も重要です。
・発作前:落ち着きがない、よだれが多い、ふらつきがある
・発作後:ぼんやりしている、歩き方がぎこちない、疲れてぐったりしている
5.発作の頻度
発作がどのくらいの間隔で起こっているかを記録しましょう。1日に何回起きたのか、過去にも発作があったかどうかも重要な情報です。
6.発作が起こった状況
発作の直前に何をしていたかを振り返りましょう。
・運動後や興奮状態だったか
・食事やおやつを与えた直後だったか
・環境の変化(大きな音やストレス要因)がなかったか
まとめ
愛犬の発作を目の当たりにすると、不安で頭が真っ白になってしまうこともあるかもしれませんが、そんな時こそ落ち着いて冷静に対応することが大切です。
発作の時間や状況を記録したり、動画を撮影したりすることで、診察の際に役立つ情報になります。また、少しでもいつもと違うと感じたら、無理をせず早めに動物病院に相談しましょう。
埼玉県狭山市の「かすみペットクリニック」