「愛猫がくしゃみを繰り返している」「鼻水がなかなか止まらない」といった症状を見て、不安になったことはありませんか?
鼻水に粘り気がある場合や、くしゃみの回数が増えている場合、それは単なる風邪ではなく「慢性鼻炎」の可能性があります。
慢性鼻炎は、急性鼻炎が治りきらないまま長引くことで発症することが多い病気です。この状態が続くと猫の鼻腔内に慢性的な炎症を引き起こし、放っておくと呼吸がしづらくなる、食欲不振につながるなど、愛猫の生活に大きな影響を与えることがあります。
今回は、猫の慢性鼻炎について、具体的な特徴や症状、考えられる原因、そして治療法について解説します。
■目次
1.猫の慢性鼻炎とは?
2.症状
3.原因
4.診断方法
5.治療方法
6.予防法やご家庭での注意点
7.まとめ
猫の慢性鼻炎とは?
猫の慢性鼻炎は、鼻腔やその周辺組織に慢性的な炎症が続く病気です。特徴的なのは、数週間以上にわたる症状が見られることで、一度発症すると完全に治すのが難しい場合もあるため、早めの対応が重要です。
この病気の多くは、急性鼻炎がきっかけで発症します。鼻腔粘膜に刺激が加わって急性の炎症が起き、それが治らずに慢性化してしまうのです。
さらに、慢性鼻炎の原因にはさまざまな要素が絡んでいることが多く、ウイルスや細菌感染が引き金となる場合もあれば、アレルギーや環境要因が関係していることもあります。
また、この病気は若い猫から高齢の猫まで幅広い年齢で見られ、一度ウイルス性疾患にかかった猫は再発しやすい傾向があります。
<慢性鼻炎の主な特徴>
・症状が断続的または持続的に続く
・鼻水の性状が変化する(透明なものから黄色、場合によっては膿状になる)
・一度治まっても再発することがある
鼻腔内に慢性的な炎症があると、呼吸がしにくくなるだけでなく、嗅覚の低下や食欲不振といった問題を引き起こすことがあります。
症状
慢性鼻炎の症状には、日常生活で気付きやすいものもあれば、進行するまで分かりにくいものもあります。愛猫の異変に早く気付くために、以下の主な症状を確認してみてください。
・くしゃみが続く
慢性鼻炎では、風邪や一時的な刺激によるくしゃみとは異なり、長期間にわたって頻繁なくしゃみが繰り返されます。
・鼻水が出る
初期の段階では透明でさらさらとした鼻水が見られることが多いですが、炎症が進行すると、黄色や緑色の粘り気のある鼻水に変化することがあります。
・鼻づまり
鼻腔内の炎症が進むと鼻が詰まり、猫がズビズビと苦しそうな呼吸をすることがあります。さらに症状が悪化すると、口で呼吸する様子が見られる場合もあります。
・嗅覚の低下
鼻腔の機能が損なわれることで、嗅覚が鈍くなることがあります。その結果、食事の匂いが分かりづらくなり、食欲が低下してしまうことがあります。
・目の症状
鼻腔と目はつながっているため、慢性鼻炎が進行すると結膜炎や目やに、涙が増えるなど、目に関連する症状が現れる場合もあります。
・全身症状
進行した慢性鼻炎では、元気がなくなる、体重が減少する、といった全身的な症状が現れることもあります。これは、呼吸困難や食欲不振が原因となっていることが考えられます。
原因
猫の慢性鼻炎は、以下のようなさまざまな要因によって引き起こされます。
<ウイルス性疾患>
猫ヘルペスウイルスや猫カリシウイルスが、慢性鼻炎の最も一般的な原因とされています。特に猫ヘルペスウイルスは一度感染すると体内に潜伏し続け、ストレスや免疫力の低下をきっかけに再活性化することがあります。
このような再発が、慢性鼻炎の一因となることがあります。
<細菌感染>
ウイルス感染後、二次的に細菌感染が起こることで炎症が悪化し、慢性化しやすくなります。この場合、鼻水の色が透明から黄色や緑色に変化するのが特徴です。
<アレルギー>
ほこり、花粉、タバコの煙、香水などの環境中のアレルゲンが原因となることがあります。
アレルギーによる鼻炎は、特定の季節や環境条件で症状が悪化することが多いため、環境を整えることで症状が軽減する場合もあります。
<異物の存在>
鼻腔内に異物が入り込んでしまうと、それが長期間残ることで慢性的な炎症を引き起こします。小さなゴミや植物の種子などが原因となることが多いです。
<腫瘍やポリープ>
鼻腔や鼻咽頭に腫瘍やポリープができると、鼻づまりや慢性的な鼻水が見られることがあります。特に高齢の猫では、これらが原因となる可能性が高まります。
<鼻咽頭狭窄>
慢性鼻炎が進行すると、鼻腔の奥にある鼻咽頭部分が狭くなる鼻咽頭狭窄という病気に発展する場合があります。
この状態になると呼吸が非常に苦しくなり、猫が頻繁に口呼吸をするようになります。
診断方法
慢性鼻炎を正確に診断するためには、以下のようなさまざまな検査を組み合わせて原因や状態を特定する必要があります。
<身体検査>
鼻水の状態や呼吸音、目の症状などを確認します。特に鼻水が片方の鼻だけから出ている場合は、異物や腫瘍が原因となっている可能性が考えられるため、注意深く診察が行われます。
<レントゲン検査>
鼻腔や副鼻腔の状態を確認するためにレントゲン検査を行います。
慢性鼻炎の場合、鼻腔内の骨が薄くなったり、構造が不規則になったりすることがあります。
また、鼻咽頭(鼻腔の奥)が狭くなっている可能性がある場合には、より詳細な確認が必要です。
<CT検査>
レントゲンで詳細が分からない場合、CT検査を行います。これにより、腫瘍やポリープ、異物の有無をより正確に調べることができます。
<鼻腔内視鏡検査>
内視鏡を使って鼻腔内を直接観察する検査です。鼻咽頭狭窄の有無や腫瘍、ポリープ、異物の確認に役立ちます。
CT検査と同様に全身麻酔が必要なため、猫の体調や年齢を考慮し、慎重に検討する必要があります。
<ウイルス検査・細菌培養>
慢性鼻炎の原因がウイルス性疾患であると考えられる場合には、猫ヘルペスウイルスや猫カリシウイルスを調べる検査を行います。
また、細菌感染が疑われる場合は、鼻水を採取して培養検査を行います。
治療方法
慢性鼻炎の治療は、原因を特定し、それに応じた適切な方法で進められます。
<内科治療>
・抗炎症薬: 鼻腔内の炎症を抑えるために使用されます。特にステロイド剤が処方されることが多いです。
・抗生物質: 細菌感染が原因の一つと考えられる場合に使用されます。
・インターフェロン製剤: ウイルス感染が疑われる場合に処方されることがあります。免疫機能をサポートする作用も期待されます。
・点鼻薬: 鼻腔内の炎症を緩和し、鼻づまりを改善するために用いられます。
<外科治療>
鼻腔内にポリープや腫瘍、異物が原因の場合には、外科的な処置が必要です。
また、鼻咽頭狭窄が原因の場合には、バルーンカテーテルを使用した拡張手術が行われることがあります。
<酸素療法>
呼吸が苦しい場合には、酸素吸入による治療が行われることがあります。
予防方法やご家庭での注意点
猫の慢性鼻炎は、一度発症すると完治が難しいことがあります。そのため、発症リスクを減らし、症状の悪化を防ぐためには、日頃からの環境整備や健康管理が大切です。
<アレルゲンを減らす>
花粉やほこり、ペットの毛を取り除くために空気清浄機を使用すると効果的です。
また、消臭剤や香水、ヘアスプレーなどの強い香りのものは猫の気道に負担をかける可能性があるため、使用を控えましょう。タバコの煙も猫の呼吸に悪影響を及ぼすため、猫がいる環境では禁煙を心がけてください。
<生活環境の整備>
鼻腔が乾燥しないように、室内の湿度を40〜60%に保つことが理想的です。加湿器を活用することで適切な湿度を維持できます。
さらに、布団やカーペット、カーテンなどほこりが溜まりやすい場所を含め、部屋全体をこまめに掃除し、清潔な環境を保ちましょう。
<健康管理>
ヘルペスウイルスやカリシウイルスの感染リスクを軽減するために、ワクチン接種を受けることが重要です。
あわせて、定期的な健康診断を行うことで鼻炎の兆候を早期に発見できる可能性が高まります。
<症状の観察>
日常的に鼻水の量や色、猫の呼吸音、活動量などを観察する習慣を持ちましょう。特に、鼻水が黄色や緑色に変わった場合や、呼吸が苦しそうに見える場合は早めに対処が必要です。
症状が軽い場合でも放置すると悪化する可能性があるため、異変に気付いたら早めに動物病院に相談しましょう。
<ストレスの軽減>
猫は環境の変化や騒音などによるストレスに非常に敏感です。新しい家族や引っ越しなどの変化は、できるだけ穏やかに進めるように心がけましょう。
ストレスが免疫力の低下を招くことで鼻炎が悪化する可能性があるため、猫がリラックスして過ごせる環境作りが大切です。
まとめ
猫の慢性鼻炎は、ウイルス感染やアレルギー、環境要因など、さまざまな原因で引き起こされる病気です。一度発症すると完治が難しいこともありますが、早期発見と適切なケアで症状を和らげ、愛猫が快適に過ごせるようにすることが可能です。
普段の生活の中では、空気清浄機や湿度管理、掃除などで快適な環境を整え、ストレスを減らす工夫を心がけましょう。また、ワクチン接種や定期的な健康診断で健康を維持することも重要です。
鼻水やくしゃみなどの症状が続いている場合は単なる風邪と思わず、まずは動物病院にご相談ください。
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