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猫の元気がない、食欲がない?|猫のFIP(猫伝染性腹膜炎)について

猫は病気になると、元気や食欲が落ちることが多いですが、FIP(猫伝染性腹膜炎)もその例外ではありません。
場合によっては、お腹が膨らんだり、足がふらつく、まっすぐ歩けないなどの神経症状が現れたりすることもあります。もし、こうした疑わしい症状が見られた場合には、できるだけ早く獣医師の診察を受けることが大切です。

FIPは、以前は「治療が難しい病気」として非常に恐れられており、発症した場合の治療はほぼ不可能とされていました。しかし、近年の研究や医療技術の進歩により、治療の可能性が少しずつ明らかになってきています。

今回は、FIPの症状や対処法について知っておくことで、愛猫の健康を守るための参考にしていただければと思います。

■目次
1.猫のFIPとは?
2.FIPの具体的な症状
3.診断方法
4.治療方法
5.予防方法やご家庭での注意点
6.まとめ

猫のFIPとは?


FIP(猫伝染性腹膜炎)は、猫コロナウイルス(FCoV)が突然変異を起こすことで発症する病気です。
猫コロナウイルス自体は、多くの場合無症状で、軽度の消化器症状(下痢など)を引き起こす程度のウイルス感染です。通常は深刻な影響を及ぼしませんが、一部の猫でウイルスが突然変異すると、FIPという致命的な病気へと発展する可能性があります。

この猫コロナウイルスは、人に感染する新型コロナウイルスとは全く異なるもので、人間には感染しません。

<猫コロナウイルス感染症>
特徴:猫コロナウイルスは、多くの猫が保有する一般的なウイルスで、通常は無症状か、軽い下痢が見られる程度です。

感染経路:主に糞便を介して感染し、多頭飼育環境や猫の密集した場所での感染リスクが高くなります。

治療と対策:猫コロナウイルス感染症自体は、特別な治療を必要とせず、自然に治ることが多いです。

<FIP(猫伝染性腹膜炎)>
発症のメカニズム:猫コロナウイルスが体内で突然変異を起こすことでFIPウイルスに変化します。この突然変異が起きるかどうかは猫の免疫力や遺伝的要因など、さまざまな要因が影響します。なお、1歳未満の子猫は免疫力が弱いため、特にこの時期に発症することが多いとされています。

症状:FIPは、ウエットタイプ(腹水・胸水が溜まる)、ドライタイプ(臓器に肉芽腫ができる)、これらの特徴を併せ持つ混合タイプに分類されます。それぞれ症状が異なり、進行の速度や影響を受ける部位も異なります。

治療:従来は治療が難しいとされていましたが、近年の抗ウイルス薬の導入により、治療が期待できるケースも増えています。

FIPの具体的な症状


FIPは発症するタイプによって症状が異なり、ウエットタイプ、ドライタイプ、混合タイプの3種類に分類されます。それぞれのタイプの特徴と症状について詳しく説明します。

<ウエットタイプ>
ウエットタイプは、腹水や胸水が溜まることが特徴です。
腹水はお腹の中に液体が溜まる状態で、お腹が膨らみ、触ると硬く感じることがあります。胸水は胸の中に液体が溜まり、肺が圧迫されるため、呼吸が苦しくなる症状が見られます。このような症状が出ると、猫は息苦しそうにしたり、元気がなくなったりすることが多いです。

ウエットタイプはドライタイプに比べて進行が早く、発症後、数日から数か月で命を落としてしまうこともあります。

<ドライタイプ>
ドライタイプでは、肝臓や腎臓などに肉芽腫(しこりのような組織)ができることが特徴です。また、目の炎症(網膜やブドウ膜炎)や脳の炎症によるけいれん発作、麻痺などが見られることもあります。

ドライタイプはウエットタイプに比べて病気がゆっくりと進行するため、慢性的な経過をたどります。
症状が急激に悪化するのではなく、数週間から数か月にわたって少しずつ進行するため、飼い主様が気づくのが遅れることがあります。初期には元気や食欲が少しずつ落ちる程度の症状しか見られないこともありますが、時間が経つにつれて、目や脳、内臓に影響を与え、けいれんや麻痺といった深刻な症状が現れることが多いです。

ドライタイプも残念ながら、最終的には命を落としてしまうケースが多いため、少しでも異常を感じたら早めに獣医師に相談することが大切です。

<混合タイプ>
混合タイプは、ウエットタイプとドライタイプの両方の特徴を併せ持ち、さまざまな症状が現れることがあります。

診断方法


FIPの診断は、問診身体検査を行い、猫の症状や体の状態を確認します。その後、血液検査X線検査超音波検査などの画像診断を使って、体内の異常を詳しく調べます。

必要に応じて、FIP特有の症状をさらに確認するために遺伝子検査や、ウエットタイプの場合はお腹や胸に溜まった液体(腹水や胸水)を検査することもあります。これらの検査を組み合わせることで、FIPの診断を確定し、適切な治療方針を決定することができます。

治療方法


これまでは、発症したFIPを治す特効薬がなかったため、主に症状を緩和する治療や免疫力をサポートする治療が行われていました。
しかし、最近では抗ウイルス薬がFIPに有効であることがわかり、この薬を使った治療が広がりつつあります
ただし、抗ウイルス薬を使った治療は費用が高額になることが多いため、かかりつけの獣医師とよく相談して決めることが大切です。

予防方法やご家庭での注意点


FIPを予防するためのワクチンや特効薬はありません。そのため、なるべく猫コロナウイルスに感染した猫との接触を避けることが予防の基本となります。多頭飼育の場合は、清潔な環境を保ち、猫同士の接触を最小限に抑えることが重要です。また、定期的なトイレの掃除や消毒も、感染リスクを減らすのに役立ちます。

感染しても多くの猫はFIPを発症せずに済みますが、免疫力が低下すると発症リスクが高まります。そのため、日常生活で免疫力を高める工夫が大切です。適度な運動、栄養バランスのとれた食事、快適な温度や湿度を保つこと、そしてストレスを減らす工夫を心がけましょう。特に新しい猫を迎え入れる際や、環境の変化がある場合は、猫に過度なストレスをかけないように配慮が必要です。

まとめ


FIPは予防が難しい病気ですが、発症を防ぐためには日々のケアが大切です。
定期的に愛猫の健康状態をチェックし、元気がない、食欲が減った、お腹が膨らんでいる、呼吸が苦しそうなどの初期症状に早く気づけるように、注意深く観察しましょう。

もし万が一、FIPを疑うような症状が見られた場合は、早めの治療が必要です。気になる症状があれば、まずはお気軽に当院までご一報ください。

埼玉県狭山市の「かすみペットクリニック」
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